はじめに  

この「えんぶり」というものはどういうものなのか少し説明をいたしましょう。


「えんぶり」は約八百年前から農民の豊作祈願の祭りとして青森県の南部地方で、今日まで受け継がれてきました。
 毎年二月の十七日の早朝、八戸市の中心にある長者山新羅神社の境内に、馬の頭を形どったきらびやかで美しい烏帽子をかぶった「太夫(たゆう)」と呼ばれる舞手と笛、太鼓、手平金で囃子をつける総勢十五〜二十人ほどの人達で構成された「えんぶり組」が何十組も集まり、一同にそろって神前に参詣します。

ながえんぶり
どうさいえんぶり


 「えんぶり」には大きく分けて「ながえんぶり」と「どうさいえんぶり」の二つの形があります。
 「ながえんぶり」は烏帽子に大きなボタンの花をつけた「籐九郎(とうくろう)」と呼ばれる舞手のリーダーを中心に、ゆったりとしたテンポで優雅に舞います。
 それに対し「どうさいえんぶり」は烏帽子の前に五色の長いたてがみを下げ、烏帽子をふりふり勇壮に激しく踊ります。
 もともと農民の芸能に始まったえんぶりの演目には「摺り込み」「摺りはじめ」「中の摺り」「摺り納め」と、その合間に「松の舞」「恵比寿舞い」「大黒舞い」「エンコエンコ」「田植え」など、お目出たい踊りが盛り込まれています。
 太夫の舞い(正式には舞うとか踊るではなく摺ると言います)には農作業の様子が表され、また太夫のかぶる烏帽子には「代かき馬」「田植え」「刈り取り」などの図柄や、豊作を祈る意味から「恵比寿大黒」「鶴亀」「宝づくし」など縁起のいい絵が描かれています。

 


 えんぶりの期間中に八戸中心街では「一斉摺り」が行われ、町中に賑やかなえんぶり囃子が響き渡り、おそいみちのくの春を呼び立ててくれます。八戸ではこのえんぶりが来ないと春が来ないと言われ、地面の下で眠っていた土の神様がようやく目を覚ますのです。