山歩きのはじまり

  尾瀬と燧ガ岳、山の思いで

 私が初めて山とのかかわりをもったのが、24歳のときの五月末、憧れていた尾瀬への旅をしたときからです。一週間休みをとって早朝の八戸駅から各駅停車でのんびり仙台へ。仙台からは夜行の尾瀬フラワー号という直通各駅列車で郡山〜会津若松〜会津田島と進みました。早朝の会津田島駅からはバスで檜枝岐、そして登山口の沼山峠へと、本当に長〜い旅でした。「遙かな尾瀬」とはよく言ったものです。尾瀬沼の長蔵小屋に荷物を置いたのが昼前。のんびりしていたら沼のほとりにそびえる高い山に登ろうとする団体がいて、少し距離をおきながら後についていったわけです。登山の用意も無しですからなんと無謀だったろうか。山頂からの眺めは素晴らしく、修学旅行で見た日光の男体山が目の前にあり、越後の山々、箱庭のような尾瀬ヶ原に大感動しました。なんと登ったその山は東北で一番高い山燧ケ岳2,356b)だったのです。夕方、尾瀬沼のほとりのビジターセンターで尾瀬の説明と自然保護の意義を聞いて新鮮な気持ちになりました。夕日に映える尾瀬沼と燧ケ岳はいまでも思い出に残っています。こんな素晴らしい世界があったんだな〜と。

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沼山峠を越えて尾瀬沼へ、長蔵小屋近くの大江湿原にて(2度目の尾瀬・新婚旅行)

 

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東北の最高峰『燧ケ岳,356メートル(福島県)です

私が始めて登った山がこの山でした。5月末の朝5時、霧が晴れた一瞬、尾瀬沼のほとりで撮りました

 

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尾瀬ガ原のミズバショウと残雪の『至仏山』です

この頃は、高山植物保護のため尾瀬ガ原からの登山は禁止されていました

標高2,228b、群馬県の山です

 

 姫神山、山の思いで

 八戸に戻ってからはすぐ名久井岳、八甲田に登り、やがて登山用具もそろってきて自信をもって歩けるようになってきました。そんなとき忘れもしないのが姫神山(岩手県1124b)に登ったときのこと。

 好摩の駅に降り、歩いて登山口に着いたときには今にも降り出しそうな曇り空。登りだして8合目あたりから雨が降り出し展望も利きません。ここで帰るのも嫌だしあせって早足で登ったのです。9合目から山頂までは岩場になっていて滑らないように上を目指しました。山頂に着いたときは土砂降り状態で全く視界はゼロ、誰もいません。一等三角点に手を触れ、あきらめて下山。いま来た方向から下り始めたのです。まもなくいくら下っても登山道らしいものが見当たらない。あれ?‥‥と思ったとき迷ったのに気づいたのです。また上を目指して登り始めこんどは慎重に下ったのですが、雨で岩場が真っ黒で登山道との区別ができないのです。ところどころ岩場の隙間からポッカリと大きな穴が覗いていて、足を滑らしたら呑み込もうとしています。恐ろしくなって焦ってばかりでした。雨と風は相変わらず強く、雷の音も聞こえてきます。しばらく彷徨したのち、霧の中に登ってきたとき見かけた木柱を目にしたときには生き返ったような気持ちでした。その元から登山道は下に続いていました。一目散に恐ろしいものから逃げ帰るようにして駆け下りたのです。途中で登ってくる登山者にすれ違いましたが、どうしたんだろうという顔つきで見ていました。登山口についてほっとして山を振り返ると姫神山は秀麗な姿を見せていたのでした。あの恐ろしさは何だったんだろう。

 体力のなさを痛感してからは体力増強のため走り始めたのですが、これがまたマラソンにのめり込むきっかけになったのです。また勤労者山岳会と出会ったことも私の山の楽しみを増幅してくれました。

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