富士山、南アルプスの峰を眺めながら、初冬の大菩薩蓮嶺を歩きました (R2.12.5 〜 12.6) |
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12月5日(土) 新型コロナ対策でマスク、手袋、人との接触はしない‥‥問題は東京駅から山手線で新宿に向かうときの混雑か? そんな心配を払拭するくらいの朝から快晴の日であった。新幹線の車窓からは岩手山、焼石岳、栗駒山、舟形山、蔵王、吾妻山、安達太良山、10月に登った那須岳‥‥と、雪を被った東北の名山の眺めを楽しめた。しかし宇都宮から曇りはじめ大月あたりまでは小雨で少し不安になる。が、塩山に着く頃には青空が見え始めた。塩山の駅からは遠く大菩薩の峰が望めた。タクシーで上日川峠に向かう。峠のロッジ脇で出発の準備をして、まず福ちゃん荘まで足慣らし。羽毛服とタイツでは暑くて福ちゃん荘の陰で身軽になる。すっかり葉が落ちた樹林の合間から大菩薩嶺の稜線が陽の光を浴びて明るく見えていた。風もなく視界も利いて絶好の陽だまりハイキングだ。尾根を登るにつれ富士山が見えてきて嬉しくなる。稜線の雷岩に着くと風があって寒くなり手袋を探す、あれ無い?‥‥しまった、上日川峠のバス停に手袋を置き忘れたのに気が付いた。今さら戻ることもできず、諦めて冬山用の手袋を着けた。まずは大菩薩嶺山頂2,057bを目指す。樹林の中は名残の雪が僅かにあるくらいだが寒い。平坦で静かな樹林の中にある山頂を後にして、雷岩に戻り富士山や南アルプスの眺望を楽しむ。ここから介山荘まで楽しみな稜線歩きが続く。標高は2千bもあるのに全く雪はない、東北の山とはこんなにも違うものか。東側は樹林帯で遠く雲海が続くが、稜線を境に西側は明るく重厚に山々が連なり、眼下の笹原の向こうに大菩薩湖があり、その彼方の重なる山々の上に富士山が美しい。2度歩いた南アルプスの峰々も甲府盆地の向こうに白い雪を被って屏風のように連なっている。親不知ノ頭で大菩薩峠に建つ介山荘を眼下にしながら、下るのももったいなく、しばらくその大展望を満喫する。 介山荘(営業は土・日のみ)を予約した際、団体が入っているので満室‥‥と言われていたが、後日に再度確認すると人数が減って泊れることになった。いつも旅行会社が多く確保するらしく、これには困ったものだ。コロナの関係で部屋は個室。しかし団体は大人数の部屋に割り振られていた。主人が玄関で声を上げている。「外でブロッケンが見えているよ〜」と。慌ててカメラを持って飛び出すと、山小屋の稜線で宿泊客が歓声を上げていた。稜線の東側の霧の中に人の陰が長く伸びていて、小さな輪になった虹が頭の部分を囲んでいる‥‥ブロッケンだ。ブロッケンを初めて見たのは9年前に裏銀座縦走のときのこと。槍ヶ岳の山頂だったがこの時はすぐに消えてしまった。しかし今日は動画や写真で撮っていても消えることなく、歩くと影と虹の輪が付いてくるほど。やがて騒いでいた泊り客らが帰ってしまい一人になった。介山荘は峠の稜線に建つ小屋なのでブロッケンが現れることが多いらしいが、極めて珍しい自然現象を見られたことは超ラッキーであった。LINEで家内に送ると「すごいねー」と返事がきた。夕食は食事部屋に私の他二人だけ。若い方はヒマラヤ遠征の経験もあるとのことで、年配の方と二日間で甲州アルプス(この呼び名を初めて知った)を縦走するとのこと。今日は柳沢峠から鶏冠山を歩き、明日は朝5時に出発して黒岳を経て初狩駅に下ると言う、一緒に地図を見ながらその縦走路の長さに驚いてしまった。隣の食事部屋では団体(年配の女性ばかり)がマスク無しで大声で騒いでいた、危ない危ない!‥‥部屋に戻る。塩山の夜景を眺めた後は何もすることがなく、早めに布団に入った。忘れてきた手袋が気になっていた。
6:41八戸駅〜9:23東京駅〜新宿駅10:30〜11:50塩山駅〜(タクシー 5,600円)〜12:20上日川峠 発12:30〜12:50福ちゃん荘〜(唐松尾根)〜13:45雷岩〜14:00大菩薩嶺〜14:10雷岩〜15:00介山荘(泊 2食8,000円) |
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雷岩の稜線から大菩薩蓮嶺と富士山を望む、大菩薩湖も見える |
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雷岩 登山者も多かった、犬連れも‥‥ |
樹林の中の大菩薩嶺山頂2,057b 所々に霜柱が残っていた |
大菩薩蓮嶺は笹原の展望が利く道が続く 妙見ノ頭、親不知ノ頭、熊沢山、小金沢山、黒岳へ続く |
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親不知ノ頭から大菩薩峠、介山荘を眼下に望む 背後は熊沢山1,957b 東側は雲海が続き、西側は陽が明るく輝いている ブロッケンが現れるには絶好の状況 |
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介山荘前の大菩薩峠の碑 背後は親不知ノ頭 |
介山荘前からのブロッケン現象 30分以上も消えることなく見えていた
霧の中に伸びた影と、周りにできる虹色の輪 頭の部分に光の輪ができ、御光がさしたようだ
ブロッケン現象は山岳の気象現象として有名で、尾根の日陰側かつ風上側の急勾配の谷で、山肌に沿って雲(霧)がゆっくり這い上がり、稜線で日光にあたって消える場合によく観察されるという。 |
塩山の夜景 |
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12月6日(日) 6時に起床。防寒対策をしてライトを点けて親不知ノ頭に向かう。雲海の彼方がオレンジに染まり始め、黒かった富士山も赤みを帯びてくる。無風で快晴、白い南アルプスも綺麗に見えてきた。甲斐駒、仙丈ヶ岳、鳳凰山、北岳、間ノ岳、農鳥岳、塩見岳、荒川岳、赤石岳、聖岳、兎岳も小さく見えている‥‥登った思い出がよみがえる。茶臼岳から光岳も歩いてみたいものだ。徐々に青くなっていく富士山を中心に何枚も写真を撮る。今回の目的の一つは朝日に輝く富士山の写真を撮り、それを年賀状に使いたいのだ‥‥目的達成! 朝食の7時に遅れてしまった。賑やかだった団体客は牛ノ寝通りを下って行ったとのことで玄関の登山靴もみな消えていた。誰もいない食事部屋でおかわり2杯。のんびり荷物をまとめ閑散とした介山荘を後に、またまた親不知ノ頭に向かい晴天の眺望を楽しむ。 当初の予定は黒岳を経て湯ノ沢峠からやまと天目山温泉に下る計画であったが、どうも湯ノ沢峠からの沢沿いの道が不明瞭のようで、結局、牛奥ノ雁ヶ腹摺山からすずらん昆虫館前に下るコースに変更した。このため時間的に大夫余裕ができたのだ。すっかり陽が登って明るくなった空の下の富士山と南アルプスの眺望を楽しんで、また介山荘に下る。周りには誰もいないが、こちらはのんびりしたもので、熊沢山の登りにかかる。このコースの稜線上には広大な笹原が点在し、常に富士山や南アルプスの山々を遠望しながら歩けるという、なかなか他にはない縦走路である。小金沢山2,014bからの富士山は靄がかかり始めてきたが、南アルプスは徐々に近くなっているように見える。黙々と歩いていると牛奥ノ雁ヶ腹摺山についた。日本一長い名前の山で、平坦な山頂にはのんびりと眺望を楽しむ登山者が10名ほどいた。すずらん昆虫館前バス停に下る道すがら、忘れてきた手袋のことが頭から離れなくなった。バスで上日川峠に向かうにはバスの時刻が2時間待ち。たぶん誰かが持っていっただろう? ゴミかごに捨てられただろう? それより天目山温泉に向かって温泉を楽しんだ方が? いろいろ考えながら下ってしまった。下山に集中していなかったためか、林道に出る手前で道を間違えてしまった。鹿よけのフェンスの中に道があったようだが、気が付かずに細い踏み跡に入り込んでしまったのだ。林道に出て方向を見失ったが少し歩いて正規の登山道に出た。ヒヤリものだった。 すずらん昆虫館前バス停には「ペンションすずらん 入浴可・食事可」の立て札があり、これを見て2時間後のバスで上日川峠に向かうことを決めた。超ラッキーな巡りあわせ。これで手袋が見つかったら最高! 入浴料500円で客は誰もいない。ペンションでそばを食べてのんびり過ごす。登ってきたバスには乗客は誰もいない。運転手は遅い時間に山の方向に向かおうとする私を見て、「峠に向かうバスだが間違いないか」と聞いてきた。「これから手袋を探しに‥‥」と返事した。このバスは峠が終点で30分後に下るバスとなる。上日川峠にはたくさんの下山する登山者がバスを待っていた。一目散に置き忘れたところに向かう。たしかここだ!‥‥しかし見回してもない!やはりだめか‥‥とため息。すると背後から「手袋を探してるのですか」と若い男性が声をかけてきた。そうだというと、さっき女性が峠のロッジに届けに行ったと言う。エ−!奇跡が起こった。礼を言ってロッジに向かい事情を話すと奥から黒い手袋が‥‥。「そ、それです! 昨日置き忘れたものです、ありがとうございました」、若いお姉さんは微笑んでいた。バスの運転手に伝えると「良かったね」‥‥と。 甲斐大和駅に下るバスは補助いすを使うほど混んでいた。富士山の写真も撮れたし、南アルプスの眺望も良かったし、ブロッケンも見れたし、日本一長い名前の山にも登れたし、温泉にも入れて、手袋もあったし、終わりよければ全て良し、良いことばかりの登山であった。
介山荘7:50〜8:00親不知ノ頭〜8:30介山荘〜9:00石丸峠〜10:00小金沢山〜10:30牛奥ノ雁ヶ腹摺山〜11:15林道分岐〜11:40すずらん昆虫館前バス停〜(ペンションすずらん 入浴) 〜バス停14:16〜14:31上日川峠15:00発〜15:45甲斐大和駅16:04〜高尾駅〜八王子駅17:47〜(JRむさしの号)〜18:36大宮駅18:46〜21:08八戸駅 |
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親不知ノ頭からのご来光、雲海が広がる |
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陽が昇るにつれ空がオレンジ色に変わっていく |
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昨年12月に登った三ツ峠山1,786bが見えている 富士山は3,776b |
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上河内岳、聖岳、兎岳、赤石岳、荒川岳、塩見岳、農鳥岳、間ノ岳、北岳、鳳凰山、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳 南アルプスの殆どの高山を眺望できた、眼下には甲府盆地と塩山の街が広がる |
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熊沢山からの富士山 |
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笹原の稜線から小金沢山、黒岳、富士山を遠望しながら楽しい縦走路歩きが続く |
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牛奥ノ雁ヶ腹摺山1,990b山頂 日本一長い山名 |
すずらん昆虫館前バス停に下山 思いがけず入浴と昼食ができた このあと、バスで上日川峠に向かい手袋を探す |
新型コロナ感染だけは避けなければ。結局、密?状態になったことはあったのか?‥‥無し。新幹線も特急も座席の隣客は居ない、電車内も閑散。新宿駅や東京駅の混雑は怖かったが、帰りは八王子から直接大宮まで電車一本で行けたが、こんな面白いコースもあったのだ、「えきねっと」はすごい。コロナの心配なしで早く自由に山に登りたいし、ついでの観光も楽しみたいものだ。今年は飯豊、吾妻・安達太良、妙高・火打‥‥12月は丹沢縦走が出来たらと願っている。 (R03.1.20) |
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