会津駒ヶ岳〜燧ヶ岳〜尾瀬ヶ原〜至仏山、を縦走しました

H30.6.297.2

平成30年6月29日(金)

24歳のとき初めて登った山が燧ヶ岳だった。のちに東北で一番高い山と知ったのは山慣れした何年もあとだった。長年の目標は会津駒ヶ岳から大杉岳を経て御池に下り、燧ヶ岳から至仏山を経て鳩待峠にいたるものだった。もう若くはないので早いうちにやってみたかった。41年ぶりの燧ヶ岳、そして新婚旅行以来の尾瀬ヶ原はどう目に映るのか楽しみであり、初めての花、会津駒ヶ岳のハクサンコザクラと至仏山のユキワリソウ、ホソバヒナウスユキソウも楽しみであった。

登山口の桧枝岐村に4時ごろ着いて、登山口に近い民宿「こまどり」にザックを置き、さっそく村内を歩き回った。桧枝岐村は人口600人若の村で、村民の殆どの苗字は「星、橘、平野」であり、狭い道の両側には人口のわりには驚くほどの墓石や石仏が並んでいた。それほど平家の時代?から続いてきた古い歴史を持つ集落なのだろう。六地蔵、檜枝岐歌舞伎の舞台や石段の席、橋場のばんばなど見て回った。ばんばに供えられたハサミは「古いハサミ・縁結び」より「新しいハサミ・縁切り」の方が多いのには驚いてしまった。いきなりの豪雨の中「駒の湯」で明日からの山旅に思いを巡らせた。

8:11八戸〜(新幹線)〜9:29仙台9:41〜(新幹線)〜10:26郡山10:44〜(磐越西線)〜11:50会津若松12:51〜(会津鉄道)〜14:18会津高原尾瀬口14:30〜(会津バス)〜15:53駒ヶ岳登山口 民宿こまどり(泊)

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橋場のばんば様

錆びた切れないハサミ(縁結び)と、新品の切れるハサミ(縁切り)がいっぱい供えられていた

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桧枝岐歌舞伎の舞台と石段席

歌舞伎は江戸時代から続いていて、石段席は鎮守神へ登る境内の斜面をうまく利用している

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国道の道端の六地蔵

悲惨な時代もあっただろうが、今では子宝・子育ての守護として参拝する人も多いという

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民宿の夕食には山椒魚の天ぷら、はっとう、裁ちソバなどの山人(やもーど)料理が出た。さすがに山椒魚の衣を剥がして実物を見ることはできずに、頭から丸かじり‥‥(^_^;)

平成30年6月30日(土)

会津駒ヶ岳の「山開き」が6時からあることを知ったのは民宿に着いてから。出発を遅らせて6時に登山口に着くとすでに100名ほどの登山者が並んでいた。手のひらにのせた赤飯にゴマをかけてくれ、お神酒をいただき、会津駒のバッジまでもらった‥‥ラッキー。 朝から蒸し暑く久しぶりの登山でもあり、急坂の連続で息が上がってしまった。やっと駒の小屋と会津駒ヶ岳山頂が見える広い湿原に着くと、何と燧ヶ岳の左に富士山が見えるではないか。思いがけない展望に疲れも吹っ飛んでしまった。会津駒ヶ岳の山頂を経て、雪渓が残る中門岳までの尾根道を進むと、湿原の中にハクサンコザクラの群落が見えだし途端に歩みは遅くなり夢中で写真に収める。池塘の向こうには平ヶ岳や越後駒ケ岳も綺麗に見えていた。遠くに雪を抱いた飯豊連峰が横たわっている。風もなく絶好の晴天の中、大展望と花を楽しみながら中門岳で大休止。駒の小屋に戻り小屋の人に大津岐峠から大杉岳を通って御池に下るコースの状況を確認する。一部に残雪があるが問題なしの6時間コースと言う、今は11時半なので6時間もかけてはいられない。約10`と距離はあるが全般に展望の利く尾根道でもあり、疲れたら大津岐峠からキリンテに下りバスで御池まで‥‥これは不本意であるが。ところで前からキリンテの地名には気になっていて、意味や由来を調べたものの地元でも不明らしい。それにしても暑い‥‥関東は先日梅雨明けしたばかりだった。駒の小屋に大勢いた登山者も大津岐峠に向かう人はまれで、さらに大杉岳に向かうとなると全くの物好きな人しか踏み込まないだろう‥‥案の定、やはり大津岐峠から御池に下るまで誰とも会わなかった。大杉林道は刈り払いされていて迷うこともない、しかし途中には電発の避難小屋があり、側の高い鉄塔は常に見えているもののなかなかたどり着かない。その向こうの大杉岳はさらに遠く、やっとの思いで大杉岳山頂についても樹林の中で展望は全く無し。疲れきった足ですぐに御池に下り、林間に車道が見えだした時にはホッとした。

駒ヶ岳登山口6:02〜(山開き)〜7:45ベンチ〜9:05駒の小屋〜9:30会津駒ヶ岳〜10:05中門岳10:2511:10駒の小屋11:3512:40大津岐峠〜13:45電発避難小屋〜14:45大杉岳〜15:32登山口〜15:45御池〜16:00御池ロッジ(泊)

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駒の小屋直下の湿原、会津駒ヶ岳が見えた

 

振り返ると燧ヶ岳の左に富士山が見えている

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会津駒ヶ岳(2,132b)山頂

 

雪渓が残る稜線を中門岳へ向かう

稜線からは燧ヶ岳、尾瀬ヶ原、至仏山、景鶴山、

平ヶ岳、雪の残る巻機山、越後駒ヶ岳、遠く

飯豊連峰などの大展望を楽しみながら歩いた

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中門岳(2,060b)山頂

さらに奥に進むと湿原の中にハクサンコザクラの大群落がすばらしい

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初めての花 ハクサンコザクラ 可憐なこの花が目当てだった

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これから燧ヶ岳(中央)の麓の御池まで6時間歩く、縦走路は長いが見えていると嬉しくなってくる

縦走路は駒の小屋の右を下り、尾根道を大津岐峠、大杉岳(中央右)へと延びている

縦走路に咲く花々 サンカヨウ

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シラネアオイ

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タテヤマリンドウ

平成30年7月1日(日)

この日は燧ヶ岳の「山開き」。昨日と同じで赤飯とお神酒と燧ヶ岳のバッジをいただいた。大勢の登山者が燧ヶ岳の急な登山道に向かうため最初から道は大渋滞。ゆっくりペースで周りの方と話しながら歩く。昨日は会津駒から大杉岳経由で御池まで縦走したと聞いた方は「よくもまー、ヤブこぎの連続だっただろう?」と驚いていた。40年ぶりの燧ヶ岳と聞いた方は「前は彼女と来たのか?」と聞いてきた‥‥どちらもハズレ〜。 広沢田代や熊沢田代はタテヤマリンドウやトキソウ、ワタスゲ、チングルマなどが見事で写真に収める。写真を撮ったり遠くになっていく会津駒ヶ岳を何度も振り返っていると、他の登山者にどんどん追い抜かれてしまった。燧ヶ岳俎ーの山頂からは尾瀬沼を眼下に男体山、日光白根山、遠く谷川岳、富士山、長々と横たわる白い北アルプスまで見える大展望を満喫する。柴安ーでは尾瀬ヶ原と明日登る至仏山を眺めながら大休止。尾瀬ヶ原の見晴に下る見晴新道は悪路の連続なので注意するようにと、御池ロッジの方に注意を受けていたので、スパッツを着けて下山。ぬかるみの連続の中を転倒しないように慎重に下る。樹林の中の2時間の下りは長かった。

見晴にある尾瀬小屋は家内と新婚旅行で昔泊ったところ。夜中に家内を起こしてギシギシ音がする廊下から外に出て、満天の星空を眺めた小屋だった。あれから36年、今では子供達もみな結婚して、有りがたいことに孫も5人。すでに定年も迎え、仕事でも私事や家族にも色々とあった‥‥。尾瀬小屋の向かいにある休憩所で御池ロッジで作ってもらった弁当を食べながら、幸せな人生を送っているなとつくづく思った。 尾瀬ヶ原は花の季節のはざまなのか登山者も少なく、花はトキソウ、サワラン、カキツバタ、ワタスゲ、ニッコウキスゲが少し咲いているだけだった。晴れ渡った湿原には心地よい風があり、原の池塘の向こうには至仏山、振り返るとまっすぐ伸びた木道の向こうに燧ヶ岳がそびえていて原の広さを満喫する。もっと原の散策を楽しみたくて竜宮からヨッピ吊橋へ遠回りして、そこから牛首に向かう。いきなり草むらからキツネが飛び出してきて、驚いた私よりさらに驚いたようで、キツネは一目散に飛び出した方向に逃げ去っていった。山の鼻が近づくごとにカキツバタの紫の群落が見事になっていった。

山の鼻小屋はアルプスなどの山小屋と違って個室であり、風呂も付いている。西日が当たる角部屋はかなりの暑さで窓を開放する。ザックを置いてさっそく近くの植物研究見本園を散策。ビジターセンターで撮ってきた花の名前を確認する。アヤメとカキツバタの区別も分かったがヒオウギアヤメを見つけることはできなかった。

 

御池ロッジ6:056:50広沢田代〜7:35熊沢田代〜8:50燧ヶ岳・俎ー〜9:20燧ヶ岳・柴安ー9:4011:35見晴12:3013:08竜宮十字路〜13:35ヨッピ橋〜14:15牛首分岐〜15:00山の鼻小屋(泊)

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山開きに並ぶ登山者(御池駐車場)

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赤飯にゴマをかけ手のひらへ

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お神酒の振る舞いも

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燧ヶ岳と熊沢田代のワタスゲ

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熊沢田代の背景に、大杉岳・会津駒ヶ岳が遠くなっていく

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燧ヶ岳・俎ーからの尾瀬沼、男体山、日光白根山、富士山 41年ぶりの景観が広がる

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燧ヶ岳・柴安ーから望む尾瀬ヶ原 武尊山、至仏山、北アルプス、巻機山、平ヶ岳、越後駒ヶ岳の大パノラマ

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尾瀬ヶ原 ニッコウキスゲの季節にはまだ早かった、登山者の姿もまばら

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明日登る至仏山(2,228b)が近くなってくる

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燧ヶ岳(2,356b) 池塘の背景に遠ざかっていく

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ニッコウキスゲと燧ヶ岳

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オゼコウホネを見つけた

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カキツバタと至仏山

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木道と湿原を彩るカキツバタの群落

平成30年7月2日(月)

朝食は弁当にしてもらったので、5時に部屋で食べて荷物をまとめて出発。小屋の入口にザックを置いて、まずは尾瀬ヶ原を牛首方面に進む。原は白い霧が立ち込めていて真っすぐ延びる木道は霧の中に消えている。極めて幻想的で、逆光のせいもあるが暗い湿原ではあるが草原は朝露にひかり、疎林や原を囲む山々は白い霧に覆われて影のように見え隠れしている。明るい緑の尾瀬ヶ原も良いが、これもまた尾瀬の景色としてはなかなかのものだ。朝露に濡れたカキツバタはより清楚に見えていた。燧ヶ岳の背後から陽が昇り始めると霧は急激に薄れていって、徐々に緑が濃くなっていった。振り返ると朝日に照らされた緑の至仏山が、明るい草原の向こうに白い月とともに大きく姿を見せていた。 

小屋に戻りザックを背に至仏山に向かう。至仏山は滑りやすい蛇紋岩の岩場が続くため、頂上から山の鼻への下山は禁止されている。40分ほどで樹林帯を抜けると原の見通しが利く岩混じりの登りとなった。眼下の尾瀬ヶ原は周囲の景鶴山やアヤメ平などの山々に囲まれ、原の中を延びる木道は燧ヶ岳の麓の見晴まで延びている。何ともバランスが良いこの景色は、高度を増すにつれて少しずつ変化していって、こんな素晴らしい展望を長く楽しめる山歩きはめったにないだろう。高天ヶ原に着くと期待していたホソバヒナウスユキソウやユキワリソウが咲いていて嬉しくなる。アズマギクは固有のジョウシュウアズマギクということを後で知った。至仏山の山頂からは遠く空との境に雪を抱いた北アルプス、谷川岳、巻機山、越後駒ヶ岳、平ヶ岳、尾瀬ヶ原、燧ヶ岳、会津駒ヶ岳、男体山、日光白根山、皇海山、武尊山など百名山がずらり、これはすごい。たぶん名前は分からないが他にも見えている百名山もあるだろう。特に会津駒ヶ岳から大杉岳、燧ヶ岳、尾瀬ヶ原と今日まで三日間歩いてきたコースが見えていて、これはもう感動ものであり、あとは鳩待峠に下るだけなので時間の限り大展望を満喫した。

いつもそうであるが登山ガイド記載のコースタイムより早く歩いている。鳩待峠に着いたときも予定より1時間以上早く、バスの切符売り場で戸倉で入浴できるところがあるか聞くと、尾瀬プラリ館という温泉施設があることを知る。バスはマイクロバスなのだが乗客が少ないとタクシーが戸倉まで乗せてくれるらしい。団体がバスに乗り込んだ後、私と和歌山から来て昨日は山の鼻でテント泊りだった方とタクシーに乗り込んだ。八戸から来たと言うと運転手は前に夫婦で八戸から来た方を乗せたことがあると話していた。戸倉のバス停で上毛高原行の時刻を確認して、さっそく近くにある温泉プラリ館に向かった。

 山の鼻小屋5:358:05至仏山8:359:10小至仏山〜10:30鳩待峠11:0011:20戸倉(♨尾瀬プラリ館)12:0713:54上毛高原駅15:2116:02大宮16:4619:08八戸

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朝もやの尾瀬ヶ原

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高天ヶ原からの尾瀬ヶ原と燧ヶ岳 会津駒ヶ岳が遠くなった

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初めての花 ユキワリソウ(雪割草) ハクサンコザクラよりハート形

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至仏山の名花 ホソバヒナウスユキソウ  ウスユキソウの種類はみな可憐で美しい

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至仏山山頂からのパノラマ 谷川岳、その上に北アルプス、朝日岳、巻機山、越後駒ヶ岳、平ヶ岳

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ジョウシュウアズマギクと武尊山

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ハクサンイチゲ

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ウラジロヨウラク

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キバナノコマノツメ

長年の目標だった桧枝岐から鳩待峠に至る長いが見どころ多いこのコースを全山歩きで実現できた。天候にも恵まれて、ハクサンコザクラ・ユキワリソウ・ホソバヒナウスユキソウ・オゼコウホネなども綺麗だった。次は秋の草紅葉の尾瀬ヶ原を歩いてみたい。

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