北海道・自転車旅行・富良野〜美瑛

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憧れていた初めてのキャンプでの北海道。自転車は新車になったものの相変わらずのママチャリで、それに登山用のテントとシュラフを積んでの旅となった。その前に本番と同じ装備で小川原湖畔まで80`の試走と蕪島でのキャンプを経験して何とか行けるかな?という感じを得たので、いよいよ出発することになった。

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ところで場所は‥‥。今までは海沿いばかり走っていたし、ちょうど7月の3連休の時期にラベンダー祭りが開かれる富良野と美瑛に決めた。富良野までの180`は一日では無理なので途中でキャンプし、次の日は美瑛の丘巡りをして、最終日に日高峠を越えて戻ってくるコースの検討を始めた。北海道キャンプ場ガイドとツーリングマップを見ながらキャンプ地を決め、さらにサイクルコンピュータもネットで購入、これがまた旅の楽しみを倍増させてくれた。

 

平成20年7月18()

自宅〜八戸港‥‥苫小牧港へ

     7月19()

‥‥苫小牧港〜栗山〜岩見沢〜美唄〜滝川〜赤平〜芦別〜上芦別公園(泊)

     7月20()

上芦別公園〜富良野〜美瑛〜山部自然公園太陽の里キャンプ場(泊)

     7月21()

山部〜金山峠(490b)〜占冠〜日高峠(500b)〜日高〜平取〜富川〜鵡川〜苫小牧港

     7月22()

苫小牧港‥‥八戸港〜自宅

  

平成20年7月18()19日(土)

  苫小牧港から岩見沢・滝川を経て上芦別公園へ

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17:30 八戸港でフェリー「べにりあ」に乗り込む。バイク20台が乗船の後、しばらく待たされて自転車1台だけで乗船。真夜中に苫小牧港に着くので乗客は皆早めの就寝となった。夏とはいえ船内は空身では寒く早々と寝袋に潜り込んだ。2等+自転車5,660

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1:30 霧雨の中、静かな苫小牧港に入港。日が昇る4時まで待合室で仮眠をとることにした。待合室にはだれもいなかったが、下船したライダー達に混じって広いフロアの隅ですぐに眠ってしまった。目覚めたときにはすでに明るくなっていて、あわてて出発の準備をして4時半に霧の中へ走り出した。

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霧雨でときどき雨粒が大きくなるが雨具を着るほどではないが、長袖とズボンで走らなければ寒い状況だった。苫小牧から早来、由仁、栗山そして岩見沢、美唄、深川、滝川と市街地ばかりを進んでいくので、見るべき景色もさほどない。遠くの景色も霧でかすんでいて全く見えず、単調で平坦な道を快調に進む。サイクルコンピュータは平均速度21`を下ることはなかった。岩見沢は大きな町である。市民病院でトイレ休憩。美唄近くで前を走る自転車3人組に追いつこうと頑張っていたら30`の日本一の直線道路の碑を見逃してしまっていた。

10:00美唄の街を走っていたとき後輪がパンクしてしまった。なんと2pのねじが突き刺さっていた。修理しようと空き地を探したが適当な場所がない。まてよ、ここは繁華街だし自転車店があるだろうと思って通りがかりのおばちゃんに聞くと、なんと100bも行かない場所に自転車店があるという。さっそくお願いして直してもらった。菅原自転車店のおやじさん、ありがとうございました。いろんな話を教えてもらいました。もうすぐパンクも直せない大学生が沢山来るという。道の情報も教えてもらった。再び走り出したその後は釘が落ちていないかと慎重になった。すると金属片やら釘やらガラス片やら色々と落ちているもので、恐ろしくなった。何年もパンクなどしたことがないのに、やはり後輪に重さが掛かっている分、踏んづけやすいのだろう。もっとも今までは長時間にわたり市街地を走ることは無かったのだ。山の中でパンクすることはまず考えられないだろう。

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突き刺さっていたネジ 22o

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昼になってやっと日が差してきた。奈井江の「道の駅・一直線」の近くに直線の中間点の碑があったので写真を撮った。直線道路とはいえ登り下りがあるため遙か彼方まで見通せるということもなく、いつのまにか滝川の直線道路終点の碑に着いた。

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赤平では「あかびら火まつり」が行われていた。立ち止まっていたら、おばあさんから「今年で最後だから見ていきな」と言われたので、しばし休憩。若者の数が少なくなって今年限りの祭りになったと話していた。会場では吉本興業の「アップダウン」がコントをやっていた。また有名な札幌の平岸天神「YOSAKOIそうらん」も見ることが出来た。旅は思いがけずにこんなことも起きる。

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芦別の道の駅では名物「ガタタン麺」を食べた。旧満州の炭坑で働いていた人が戻って伝えたらしい。ガタタン「含多湯」には芦別産の食材十三種類が入っている。坑夫が飲み歩いたあとの締めの一杯で食べたらしい。こんなところに炭坑の街の面影を見ることができた。腹が減っていたので写真は大夫具が少なくなってから慌てて気が付いて撮ってしまった。

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上芦別公園は良く整備されている。キャンプ場ではないがネットで調べて使わせてもらった。この日テントを張ったのは私だけであった。広々としてトイレや外灯もあり夜も明るく寂しいことはなかった。テントを張って夕食は近くの食堂で食べて、疲れもあり北海道日本ハムの野球中継を聞きながら20時には眠ってしまった。

走行距離 158.1`   平均時速 18.4`   最高速度 36.0`   走行時間 8時間33

 

平成20年7月20()

  上芦別公園から富良野・美瑛、そして山部キャンプ場へ

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5:00起床、近くの水飲み場で洗面。荷物をまとめてのんびり6:45出発。公園の入り口で犬の散歩のおじいさんに呼び止められた。「どこから来たんだい、へー内地からかい、気いつけてな〜」と言われた。気軽に声を掛けられると嬉しくなってしまう。

この旅初めての野花南トンネルまで来た。トンネルは嫌である。車に追い立てられるように振り返りながら進んだ。

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曇り空の滝里ダム。近くのオートキャンプ場は上芦別とは違って大いに賑わっていた。

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8:15霧雨の中、富良野に到着。富良野駅の中にあるコインロッカーに重い荷物を預ける。富良野駅で朝食のテンプラそばを食べた。ここは北海道のど真ん中でへそと言われ「北海へそおどり」があるという。駅の待合室には絶えず“さだまさし”の「北の国から」が流れていた。そばでは女子高生が楽しそうに話し込んでいた。

← 富良野駅待合室で 北海へそまつり

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ラベンダーの花と蜂

 

富田ファーム →

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まず中富良野の富田ファームのラベンダー畑を見に行った。この日がラベンダー祭りの初日で道は何`も前から大渋滞であったが、自転車はそれを横目に快調に進む。素晴らしいお花畑で、これだけでも来たかいがあった。

← かんのファームで(美瑛)

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美瑛ではまず「パフィーの木」を見てきた。その途中では広大な畑の風景を見ることが出来た。しかしどうしてもデジカメではその大きさを写し撮ることが出来ない。冬は大変だろうと思うと、観光客の勝手な目で見ているのが申し訳ないように感じてしまった。

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「パフィーの木」に向かう急坂・砂利道です。右上の赤い屋根の農家の犬4匹が吠えながら追いかけてきた。畑は麦、じゃがいも、枝豆等々。それにしても驚くことにどこの畑も広大なのに良く管理されていて、雑草などほとんど生えていなかった。我が家の狭い畑を思い出してしまった、帰ったら草取りである。

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何気ない美瑛の丘の風景。たった一人で広大な丘を眺めていると心が安まってくる。農家の近くの道端にパラソルを広げ無人の野菜の路地販売をやっていた。トマトが美味しそうだったので買おうとしたら小銭がない。帰ろうとしたら女の子が走って来た。お釣り600円を持ってくると言って戻っていった。再び来たときにあらためて財布を見たら万円札しかない。情けなくなって「ごめんなさい‥‥」と平謝りである。すみません‥‥と言って女の子はまた走って帰っていった。こんな山里の中に可愛らしい子がいるのに驚いてしまった。なんだか北海道の逞しさを感じて、この子が良い人生を歩んでほしいと感慨深かった。

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どこまでも続く丘は畑がパッチワークのように広がっている。美馬牛の「四季彩の丘」も見たが自然の丘を見たあとでは、もう人工のお花畑には感動もなくなり、中国人か台湾人か分からないが多くの異国の言葉がうるさく聞こえ嫌になり早々と美瑛を後にした。道端に咲く花の方がより綺麗に見えてきた。曇天で十勝岳や富良野岳が見えないのが残念であった。

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結局美瑛の丘は、ほんの入り口を覗いただけだった。廻れば景色の良い場所は沢山見られただろうが‥‥しかし、もう今日は十分であった。早く戻らないと山部のキャンプ場に日があるうちに着けなくなってしまう。こんど来るときは美瑛だけで一日を廻る日程にしなければ。

富良野駅に戻り荷物を積み込んで、山部のキャンプ場に向かった。昼食なしで走り回っていたので、途中で旭川ラーメンを食べた。国道を避け道道の畑の中の道を進むと、途中から雨が降り出して土砂降り状態になった。廃校になった小学校の前の集会所をみつけ、軒下に隠れたときにはびしょぬれになっていた。「長い間ありがとう」の垂れ幕があったが、90年の長い歴史を終えた小学校を見ていると北海道の厳しさを感じてしまった。雨が小降りになった頃にまた走り出して、山部の駅前のコンビニで夕食の弁当を買い、長い上り坂を登ってキャンプ場に着いたのが17:00。自転車はキャンプ場の中に入れることができないので、多くの車が並ぶ駐車場の隅に静かに置いた。綺麗な芝生のキャンプ場にはファミリー連れのテントばかりで賑やかであった。しかし夜通し雨が絶え間なく降り続き、明日の二つの峠越えのことを思いやっているとなかなか眠りにつくことが出来なかった。

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走行距離 113.1`   平均時速 17.2`   最高速度 45.7`   走行時間 6時間34

 

平成20年7月21()22日(火)

  山部キャンプ場から日高峠を越え、富川・苫小牧港へ

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4:00には起き出して荷物をまとめ、雨が止むのを待った。テントの隙間から眺める外は相変わらず雨が降っている。小降りになった頃近くの炊事場にテントを運んでパッキング。自転車は正面(写真右)の橋を渡った駐車場に置いてある。時折強い雨となる中、苫小牧港に向けて出発した5:55。無風なのはありがたかった。

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金山峠490b

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日高峠500b

金山町を過ぎてから長い登りが始まった。雨の中での金山峠490bの曲がりくねった登りは厳しかった。一番軽いギアで時速8`でゆっくり登るのが精一杯。30分以上の頑張りのあとやっと峠に着いた。456bの長いトンネルのあとは急な下りが待っていた。その時である。50b先を3匹の蝦夷鹿が跳ねながら横切っていった。「鹿!、しか!、シカ!」という感じで大感激であった。

大粒の雨の占冠道の駅で休憩のあと、こんどは500bの日高峠が待っていた。しかし金山峠で高さを稼いでいたのでこちらはさほど厳しさは感じなかった。峠の表示もなく少し下ったところで気が付いての写真撮りとなった。この峠を越えたとたん急に雨雲が消えて青空が見えだした。

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沙流川の渓谷

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平取の牧場

日高の町を過ぎ、明るい日差しの中でやっと雨具を脱ぐことが出来た。絞ると水が滴るほどのずぶぬれだった衣類は間もなく乾いてしまった。道は沙流川の渓谷を見ながら太平洋に向かって進んで行く。平取町荷負ではいきなり目の前に蝦夷鹿が飛び出した。驚いたのは双方で鹿は私に気が付いてすぐに山に戻っていってしまった。自然の豊かさには感動の連続であるが、車にはねられないように願うばかりである。さすが日高路は競走馬の里で平取の牧場では馬がのんびり草を食べていた。

富川で昼食後、7年前に走った道(アポイ岳往復)を進んだ。再びこの道を走れる‥‥全てのことに感謝したい思いを感じていた。浜厚真からは沼ノ端まで広い国道を快調に走る。ここまで150`にも及ぶ長い道を走ってきたのに、良く体力が続くものだと我ながら感心した。

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15:30苫小牧市街地の「なごみの湯」に到着。野天風呂のあと名物の「北寄貝カレー」を食べた。その前にもちろんビールも。20:30までのんびり過ごし、またまた霧雨の中、暗い道を最後の苫小牧港に向かった。

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身軽な愛車

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初めて出会ったランドナー車

21:00苫小牧港到着、無事戻ってきた。ここでこの旅で初めてランドナー車に出会った。すごい荷物が前後に着いている。どこを走ってきたのだろうか。私の荷と比べると大変な違いである。それにしても今回は自転車ツーリングの人には一人も出会わなかった。シーズンにはまだ早いのだろうか。22:25バイク3台のあと早くに乗船、24:00出港、このときすでに眠っていた。2等+自転車5,660円。

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八戸港7:30到着、自転車は最後の下船となった。またまた雨の中を自宅に向かった。8:00自宅に到着。

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走行距離 161.1`   平均時速 18.9`   最高速度 44.3`   走行時間 8時間29

 

いい旅だった。特に何を見たいという強い目的など無いのに430`の道を良く走ったものである。何かを期待しているわけでもなく、何気ない旅の途中の風景に「いいな〜」と感じたりすることが何度もある。また初めて見るもの、初めて通る道に緊張しながらの旅は新鮮さを感じるし、一日の旅を終えたときの達成感がまた良い。今までと違ってキャンプとなるとその達成感は数倍も増幅してくる。テントの中で地図を見ながら今日の道を振り返ったり、明日の道を思いやっていると本当に楽しくなる。予期せぬことも起きる。蝦夷鹿も見たし、初めてのパンクに驚いたり、止まぬ雨もまた良し。すべて自然の中で起きたことと思うと楽しくなる。次は札幌から小樽・余市・積丹へと日本海沿いに走ってみようか、北海道での自転車の軌跡と思い出が広がっていく。(平成20年7月31日)

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